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すべてのエピソード

宇宙兄弟·Nippon TV

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2シーズン · 99話

シーズン2

S2 · E1 25分

兄とは常に 第1話

あなた

宇宙飛行士候補生・アスキャンの、サバイバル訓練5日目の夜。 砂漠のど真ん中でキャンプをしていた六太は、たくさんの流星群を見上げながら、子どもの頃を思い出していた――。 2006年7月9日。 星空の下、録音機を持って調査遊びをしていた六太と日々人は、偶然にも月へ向かうUFOを目撃し、『二人で一緒に宇宙飛行士になる』と、約束を交わした。 そして2025年5月――。 日々人は約束を守って宇宙飛行士になったが、六太は自動車会社をリストラされ、職探しの真っ最中となっていた。 『兄とは常に弟の先に行ってなければならない』 なのに何をやっても六太を追い越し、先を行くのは日々人だった。 六太は落ち込んでいた。自分は何がやりたかったのか……と。 そんな時、母に事情を聞いた日々人からメールが来る。 『2006年の7月9日。ムッちゃんが録ってたテープを聴いてみろよ』 テープを探し出して聴くと、そこにはハッキリとした言葉で、子どもの頃の『約束』が残されていた。 テープを聴いて以来、六太は日増しに宇宙への想いを膨らませていた。そしてある日、なぜか自分宛てにJAXAから封筒が届く。それは新規宇宙飛行士選抜試験の、書類選考合格通知。 実は日々人が母に頼み、JAXAに六太の履歴書を提出していたのだ。 しかし六太は、次の選考試験を受けるか悩んでいた。その気持ちを察したシャロンは、『今のあなたにとって、一番金ピカなことは何?』と助言する。六太はようやく思い出す。『月にシャロンの望遠鏡を建てたい』、そう思っていたことを。 一カ月後――見事筆記試験に合

S2 · E2 25分

生きて二人で月に立とう 第2話

あなた

日々人が月に来て2カ月――。 「俺ももう全然行けるんだけど、外」 船外活動するフレディとリンダを眺め、日々人が羨ましそうにつぶやいた。 あの事故以来、日々人には船外活動の許可がおりないでいたのだ。 サポート中のバディと話しながら、月に来てからのことを振り返る日々人。 2カ月よりもっと長い間月にいる気がするのは、やはりあの事故のせいのようだった――。 日々人たちが月に来て間もなくの頃――。 無人探査機・ギブソンとの通信が途絶えた。 管制からその連絡を受けた日々人とダミアンは、ギブソンを見つけ出して修理するため、基地を離れることとなったのだ。 しかしその途中、日々人とダミアンが乗ったバギーは、突然の衝撃に見舞われてしまう。 気づくと、そこは太陽光の届かない暗い谷底だった。 一緒にいたダミアンは足をケガして立てなくなっており、音声機能と体温を調節する循環機能も故障してしまったようだった。 そして日々人も、酸素のメインタンクを脱出の際に破損してしまい、危険な状態となってしまう。 それでも日々人は諦めず、凍え続けるダミアンを発見したギブソンに乗せ、太陽の光があたる安全な場所へと連れて行く。 だがその時にはもう、日々人の酸素は残りわずかとなっていた。 どう考えても、基地からの救援は間に合いそうにない。 どうせ死ぬなら満点の星空を見て死にたいと思い、日々人は再び谷底へと向かおうとしていた。 しかしその途中、ピカッと光るモノを視界の端でとらえる。 気になって光に近づくと、それは大先輩ブライアンが『いつか兄弟で月に立てるように』と望ん

S2 · E3 25分

俺には運がある? 第3話

あなた

サバイバル訓練、5日目の夜――。 六太は焚き火を眺めながら思っていた。 『……なんか見えるな……いろんなもんに』 六太の視線の先には長いサボテンがあり、それが手前の焚き火の形と合わさって、ロケットと噴射炎に見えてきたのだった。その光景から六太は、日々人を乗せたロケット・マルスワンが飛び立つ姿と、その時一緒にいたデニール・ヤングの言葉を思い出す。 『――空は誰の物でもない。だが人生は自分のもの。人生はコントロールがきく』 「あれから俺は宇宙飛行士になって……少しは人生のコントロール、効いてんのか? いや……俺は……どこへ行くんだろう……」 さらに六太は、宇宙飛行士としての一歩を踏み出し始めた日のことを思い出していた――。 『我々JAXAは君を――宇宙飛行士として迎えます――おめでとう! 君には運がある!』 宇宙飛行士選抜試験・合格発表の日、六太はJAXAの職員・星加に呼び出され、近所の公園で合格結果を聞いたのだ。 そしてその数カ月後――。 六太は日々人と交わした『一緒に月へ行く』約束を果たすため、ヒューストンでの合同基礎訓練へ望んでいた。合同基礎訓練とは、各国の新人宇宙飛行士候補生がNASAに集まり、一緒に同じメニューの訓練をこなすというもの。ヒューストンへ着くと、さっそくNASA主催の歓迎会で、新たな仲間・占いがことごとく当たるという、アマンティと出会った。軽い気持ちで六太も占ってもらったのだが、明らかに不穏な眼差しを見せるアマンティに不安が募る。一体、六太の未来になにをみたというのだろうか――? ――その謎が

S2 · E4 25分

遠すぎるゴール 第4話

あなた

宇宙飛行士候補生・アスキャンが、砂漠70キロを踏破するサバイバル訓練の最終日。 にも関わらず、六太は高熱にうなされ、ダウンしてしまっていた。 一人でもリタイアすれば、仲間全員がリタイアしたことと同じ。 E班全員がリタイアするか、それとも今日中のゴールを目指して進むか、六太は判断を迫られていた。 しかしこの日のリーダーは、未来が見えるアマンティ。 彼女にはわかっていた、六太が続けるということを。 「南波の荷物は、俺が全部持つよ。当然だ」 六太の具合が悪くなったのは自分のせいと思っていた新田は、出発の時、六太のリュックを持ち上げ、一人で背負おうとしていた。 しかしケンジもせりかも、仲間全員、六太の荷物を持ち、サポートする気満々。 仲間の優しさに救われ、六太は思う。 「最下位でもなんでもいいから絶対……ゴールまで歩いてやる。1位と最下位の差なんて――大したことねーんだよ」 辛い道中だったが、ようやくゴールが見えてきた。 「着いた……これでようやく次の訓練に――ん?」 六太たちの視線の先に、上空からパラシュートの付いた物体が落ちてくる。 やがて車道脇の乾いた大地にドシュッと落ちる――と、パラシュートの先についていた物体、留め金がバカッと外れ、ザザッとタイヤのようなもの(キャンサット)があたりを走行しはじめた。 それはサバイバル訓練をトップでゴールしたA班のもの。 カムバックコンペティションに参戦するため、早々に研究している真っ最中だったのだ。 カムバックコンペティションとは、昔から開催されている、宇宙好きの学生たちを中心とし

S2 · E5 25分

酒の約束 第5話

あなた

六太たち宇宙飛行士候補生の次なる訓練は、カムバックコンペティションへの挑戦だった。 カムバックコンペティションとは、パラシュートの展開システムや、自動制御のローバーを作り、どのくらい正確にゴールへたどり着けるかを競う大会である。 しかし最下位でゴールしたE班のサポート役は、全くサポートする気のない屁こき技術者、ピコ・ノートン。しかも完全な酔っ払いだったのだ。 ピコに不安を感じた六太とケンジは、ピコが所属するデンバー社の職員に、彼について話を聞くことにした。 職員によると、ピコは帰還船オリオンの開発を任されており、さらにパラシュートの展開システムを開発・製造するサブプロジェクトの総合責任者とのことだった。 しかも、日々人たちが帰りに乗るオリオンのパラシュートも、ピコが手掛けたものらしい。 職員は熱く語る。 ピコはただの酔っ払いではない、試行錯誤を繰り返し、やっと今の使えるパラシュートシステムに仕上げた技術者が、ピコ・ノートンなのだと。 気を取り直し、ローバーの制作を開始することにした六太たちE班。 ネットで調べた図面を頼りに、ボディらしきものを作ったのだが、一つ問題が浮上した。 E班は最下位チームのため、制作費は600ドルと一番低額で、このままだと1機しか作れないのである。 六太は言う、「失敗して壊れるの前提で、最低でも2機作れるくらいの余裕があった方がいい。モノ作りには失敗することにかける金と労力が必要だ。失敗を知って乗り越えたモノなら、それはいいモノだ」と。 六太の言葉を聞いたピコは、ブライアンが亡くなった、アレ

S2 · E6 25分

技術者のスイッチ 第6話

あなた

六太たちE班の宇宙飛行士候補生は、「カムバックコンペティション」に挑戦するため、決められた予算内でキャンサット作りに励んでいた。 しかし、パラシュートがうまく開かなかったり、ローバーが障害物を越えられず、すぐ止まってしまうという問題が発生してしまう。 みんなが頭を悩ませる中、六太は車づくりの知識と大胆な発想力を駆使し、プログラムの変更とタイヤをスポンジで作ることで打開しようとする。 スポンジならギュッと縮めて筒に入れられ、走る時には十分な大きさに膨らむ、軽いし安いし、加工もしやすい。着地の時のショックもやわらげることができ、いいこと尽くしである。 これまで様子を見ているだけだったピコは、自分ができなかった発想と、失敗を乗り越えて良い物を作ろうとする六太の考え方に衝撃を受けた。 「パラシュートの『パ』ぐらいは教えてやってもいいかな」 ピコはパラシュートの布を素早くキレイに畳みながら、作業の心構えを話し始める。 それは、キャンサットが本物の宇宙船と考え、自分の隣にいる宇宙飛行士を一緒に乗せて打ち上げるつもりで、全部の作業をやれということ。 そして、隣の男の命を預かったつもりで、パラシュートは女子が畳む方がより良いことを教えた。 「パラシュートってのは、愛で開く」 その昔、戦場へ行った夫やボーイフレンドに無事に帰ってきて欲しいという願掛けの意味で、パラシュートが開く生命線になる収納作業は女性がやっていた。 成功率を少しでも上げるため、ゲン担ぎとして女性がやったほうが良いらしいのだ。 ピコのアドバイスと、六太の大胆な発

S2 · E7 25分

本気の失敗 第7話

あなた

宇宙飛行士候補生たちが「カムバックコンペティション」へと挑戦する中、なぜか六太はピコに気に入られ、酒の席へと誘われていた。 集合場所である酒場へ向かっていると、駐車場で教官・ビンスと出くわす六太。聞けばビンスもピコと酒を飲むらしく、酒場まで車に乗せてくれることとなった。道すがら、猛スピードで車を運転しながら、ビンスは六太に質問を投げかける。 『君にとっての、敵は誰ですか?』 ビンスにとっての敵は、マスコミだという。 理由は、マスコミの大多数が宇宙開発、有人飛行を長い目で見てはくれないからだった。他にも、国の予算が有人に多く使われることに反対し、口をそろえて金のムダ遣いといい、無人機のみの宇宙開発を提唱する、科学者、ロボット業界、天文学者たち。有人飛行を邪魔する者は、ビンスにとってはみんな敵のようだった。六太は答えた。宇宙が好きで関わっているのなら、みんな仲間でいいのではないか――? 『俺の敵は、だいたい俺です』 自分の宇宙へ行きたいという夢を、さんざん邪魔して、足をひっぱり続けたのは、結局自分であり、そういうことに気付かせてくれたのが、天文学者のシャロンだった――と。 酒場でピコと合流すると、話題は六太の『失敗に前向きな性格』へと変わる。『本気の失敗には価値がある』と言い放つ六太に、ピコとビンスは少年時代共通の友達だった、リックのことを思い出していた。 ピコとビンスが生まれた町は、ミネソタ州・ポットヒルの田舎町。宇宙に憧れ、ロケットを作りに奮闘しながら、共通の友達リックは口癖のようにこう言っていた。 『本気の

S2 · E8 25分

誓いのサイン 第8話

あなた

宇宙飛行士候補生の訓練、カムバックコンペティションの準備をする中、なぜか六太は、サポート役のパラシュート技術者、ピコ・ノートンから飲みに行かないかと誘われる。 酒の席には候補生たちの教官であるビンセント・ボールドもおり、どうやら2人は、失敗に前向きな六太を、共通の親友・リックと重ねているらしかった。 リックとピコとビンスの子供時代――。 3人の夢は、いつか自分たちでロケットを作り、宇宙へ行くこと。 それは、『いつか宇宙へ行く』と毎日誓いを交わすほど、熱心だった。 しかし親や教師たちは、3人の夢に反対していた。 将来は鉱山で働くよう強く説得していたのだ。 ピコとビンスは反抗することが出来ず、宇宙への夢を諦めると言い出す。 『テンションの上がる仕事じゃねえが……鉱山技師も悪くない』 『宇宙への夢は最初から俺たちにはでかすぎた』 2人の諦めの言葉を聞き、リックは激高した。 『こんなど田舎の街で宇宙に本気で憧れた3人が出遭えたんだ。俺はそれだけでも、奇跡だと思ってた。 拳を合わせる気がねえんならもういいよ。勝手に鉱山でもどこへでも行ってくれ――俺は絶対諦めねえからな』 それ以来、3人は決別してしまった。 そして――。 ビンスとピコが進学の説明会に出席した日の午後、リックは事故で死んでしまった。 乗用車に乗っていたリックは凍結した路面にハンドルを取られ、そのまま湖に突っ込んでしまったのだ。 ピコとビンスは、この日のことを死ぬほど後悔した。 後悔という言葉では、全く足りない程に――。 ISSが来る日――ピコとビンスは夜空を見上げ

S2 · E9 25分

海人と宇宙人 第9話

あなた

宇宙飛行士候補生の訓練として、カムバックコンペティションに参加することになった六太たちは、2週間の準備期間を経て、ついに大会当日を迎えていた。 しかし、六太たちE班には試練が待ち受けていた。局地的な雨によって、コースの一部がぬかるみになってしまっていたのだ。 E班のローバーはスポンジタイヤ。スポンジが水分を吸収してしまったら、負荷がかかって止まってしまうのだ。打ち上げまで時間がない。 六太たちは、スポンジタイヤを濡らさない方法を、早急に考えなければならなくなった。 宿泊していたホテルに戻り、なにか使えるものはないかと探す六太たち。 案内して貰った備品倉庫で、六太は気づく。 このコンペの訓練は、チームワークの向上だけが目的はないこと。 今体験しているのは、宇宙開発の縮小版であり、宇宙飛行士を無事に送るため、支える側の人達がやってきた仕事なのだ――と。 六太たちがコンペ会場のテントへ戻ってくると、すでにロケットの打ち上げが始まっていた。 「大丈夫だよ、みんな。想像では、うまくいってる!」 六太は、備品倉庫で手に入れた『シリコンボンド』をスポンジタイヤに塗ると、見事、水濡れを防止することに成功した。 コンペ結果発表――。 六太たちE班は、全体の5位になることができた。 1位のチームは、日本からきた海人チーム。 どのチームもゴールまで届かない中、海人チームのローバーは圧倒的なスピードで、ゴールフラッグに辿り着いたのである。 日本人同士ということもあり、気さくに話しかけてくれる海人チーム。 そしてなぜか、海人チームの上司が

S2 · E10 25分

日々人を待つ人々 第10話

あなた

日々人が月から帰ってくる――。 地球に帰還する時の命綱となるパラシュートを手がけたのは、ピコ・ノートン。六太たちが訓練として参加した、「カムバックコンペティション」のサポート役だ。しかし、今回は3年前のパラシュート事故以来、初めての月からの帰還である。事故を知る関係者の間には、緊張が走っていた。 その頃、日々人、リンダ、ダミアンは、着陸船アルタイルに乗り、月面を離れていた。月軌道上には地球への帰還船3機が回っており、日々人たちが乗って行ったオリオンと、ロシアチームのルーニエ2号、もう一つは予備として、2025年に無人で月に送られた、3人乗りのオリオンがあった。今回日々人たちが帰還船として乗り込むのが、この3人乗りのオリオンである。 日々人たちの帰還日――。 ピコは、自宅の洗面所でヒゲや髪を整え、見違えた姿になっていた。 なぜキッチリネクタイを締めるのか、と息子たちに聞かれると、ピコは言った。 「ネクタイを締める理由なんてのは、1コしかねえ、仕事が無事に終わった後に、緩めるためだ」 その顔は、『必ず日々人たちを地球へ帰す』、そう願掛けをしているかのようであった。 ジョンソン宇宙センター――。 管制室内には、大勢の管制官、宇宙飛行士、六太たち訓練生が集合していた。 そしてその外側の観覧室では、南波父母、ジェニファー、ピコが、日々人の帰りを今か今かと待ちわびていた。 そして――。 砂漠の真上に、パラシュートが全てキレイに開いたオリオンが、見事に降下してきた。 日々人たちは無事、地球に帰還できたのである。 大歓声の中、

S2 · E11 25分

遥か遠くを望む人 第11話

あなた

月から帰ってきた日々人は、地球の重力に慣れるため、リハビリを開始しようとしていた。寝て検査して運動してまた寝て、そういうサイクルがこの先45日間続くのである。 一方六太は、アマンティに『不安な未来の話の続き』を聞いていた。 「私が見たのは……ムッタがとても悲しんで……辛い思いをしている姿……」 六太に直接何かが起こるわけではないらしい。 「帰ってきたヒビトを見て分かったの、ヒビトもあなたと同じように――辛い思いをすると思う」 どうやら六太と日々人にとって大切な誰かが、重い病気になるらしいのだ――。 その頃、ゴダード宇宙飛行センターでは――。 天文学者であるシャロンが、宇宙開発についてプレゼンをしていた。 シャロンの提案は、NASAの宇宙飛行士に協力を依頼し、月面で望遠鏡を組み立ててもらおうというもの。 「我々天文学者には、遥か遠くまで行く力はありませんが、遥か遠くを見る力なら、我々に勝る者はいません。きっと実現できます。ここにいるみんなの力があれば――」 そして――。 六太たち宇宙飛行士候補生たちは、ジョンソン宇宙センターの近くにあるエリントンフィールド空港に来ていた。 宇宙飛行士に認定されるためには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要なのだ。 航空力学に始まり、エンジンシステムなどのメカニック、基本的な航法に各種飛行ルールなど、覚えることは山ほどあるのである。 六太はジェット機に乗ることをずっと楽しみにしていた。 いつか見た日々人のように、六太も人生初のマッハを体験できるかもしれないのだ。 だがそんな気持ち

S2 · E12 25分

若き日のドキドキ 第12話

あなた

ジョンソン宇宙センター・講義室――。 宇宙飛行士として認定されるには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要である。 そのため六太たち訓練生は、空軍の学生が3週間かけて習う内容を、3日間で覚えることとなった。さらに5日後には筆記テストが行われるらしく、そのテストの結果次第で今後の訓練の各種優先順位が決まってくるため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は焦っていた。 「順位がつくものなら、常にトップを狙わねえと――!」 その頃、ゴダード宇宙飛行センター・カフェテラスでは――。 会議を終えた天文研究者たちとシャロンが、ワイワイと盛り上がっていた。 シャロンが提案した電波望遠鏡の計画に好感を持ち、同じ研究者であるモリソン博士らが話しかけてきてくれたのだ。しかもモリソンは、シャロンと同じく、思い入れのある小惑星の姿を、鮮明に見たいと願っているらしい。同じ志の仲間を見つけることができ、シャロンの計画は、一歩一歩実現に近づいていた。 そして――。 シャロンは日々人たちに会うため、ヒューストンへと移動する。 久々の再会に喜ぶシャロンだが、どうにも体調がよろしくない様子。 手に力が入らず、バランスも崩してばかりなのだ。念のため医者にも診てもらうが、異常なしとのこと。シャロン自身も時差ボケによる脱力感であると思っていたが、果たしてそうなのだろうか。 その夜――。 レストランでは、ケンジやせりか、南波父母やシャロンたちが集まり、『日々人お帰り会』が行われていた。せりかは、子どもの頃からファンだったシャロンに会うことができ、感激。

S2 · E13 25分

一切れのケーキ 第13話

あなた

ジョンソン宇宙センター・一室――。 真剣な顔つきで筆記テストに臨んでいる訓練生たちの中、六太の手は止まっていた。誰よりも早く月へ行き、シャロンとの約束を果たしたいと思っているにも関わらず、まったくテストに集中できないのだ。 数日前――。 六太とせりかは、シャロンの症状を解明するため、神経内科病院へ来ていた。せりかがシャロンの腕を叩いた時、筋線維束収縮の反応があったからである。せりかは、シャロンが自分の父と同じ病気、『ALS』の可能性を心配していた。 『ALS』とは、運動ニューロンという神経だけが障害を受け、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなっていく病気である。そのせいで筋肉がやせ、徐々に手足が動かせなくなり、食べることも、話すことも、自力での呼吸もできなくなってしまうのだ。 シャロンの検査結果は、ALSだった。あと数ヶ月で、シャロンは大好きなピアノも弾けなくなってしまうのである。そのことを告げられても、それでもシャロンは笑顔を忘れなかった。 六太は、「僕はいざという時、役にも立たないダメ人間です」を英語で言うとどうなるか、シャロンに聞いた時のことを思い出していた。 『イッツア・ピース・オブ・ケイク』  直訳すれば「ケーキ一切れ分」ということだが、違う意味もあるというシャロン。 その時の六太は、マイナスの意味で受け取ったが、本当の意味は――。 『楽勝だよ』 こういうウソを、平気な顔でついてしまうのがシャロンだった。 後日、六太のにシャロンからメールが届いた。 『私も3年後か4年後かに、あなたに月面望遠鏡建設計画の

S2 · E14 25分

車イスのパイロット 第14話

あなた

ジョンソン宇宙センター・一室――。 真剣な顔つきで筆記テストに臨んでいる訓練生たちの中、六太の手は止まっていた。誰よりも早く月へ行き、シャロンとの約束を果たしたいと思っているにも関わらず、まったくテストに集中できないのだ。 数日前――。 六太とせりかは、シャロンの症状を解明するため、神経内科病院へ来ていた。せりかがシャロンの腕を叩いた時、筋線維束収縮の反応があったからである。せりかは、シャロンが自分の父と同じ病気、『ALS』の可能性を心配していた。 『ALS』とは、運動ニューロンという神経だけが障害を受け、脳から筋肉を動かす命令が伝わらなくなっていく病気である。そのせいで筋肉がやせ、徐々に手足が動かせなくなり、食べることも、話すことも、自力での呼吸もできなくなってしまうのだ。 シャロンの検査結果は、ALSだった。あと数ヶ月で、シャロンは大好きなピアノも弾けなくなってしまうのである。そのことを告げられても、それでもシャロンは笑顔を忘れなかった。 六太は、「僕はいざという時、役にも立たないダメ人間です」を英語で言うとどうなるか、シャロンに聞いた時のことを思い出していた。 『イッツア・ピース・オブ・ケイク』  直訳すれば「ケーキ一切れ分」ということだが、違う意味もあるというシャロン。 その時の六太は、マイナスの意味で受け取ったが、本当の意味は――。 『楽勝だよ』 こういうウソを、平気な顔でついてしまうのがシャロンだった。 後日、六太のにシャロンからメールが届いた。 『私も3年後か4年後かに、あなたに月面望遠鏡建設計画の

S2 · E15 25分

二つのノート 第15話

あなた

自信満々な教官・デニールのもと、宇宙飛行士になるために欠かせない、ジェット機・T-38の操縦訓練を受けることとなった六太は、初飛行だというのに、4倍以上の重力が加わる飛行の時だけに必要な、『Gスーツ』を着込まされてしまう。不安な表情を浮かべる六太に、デニールは機体をチェックしながら語り始めた。 「飛行前のチェック作業は気を抜くな。事故った時、整備士に責任を押し付けるのは、パイロットの恥っちゅうもんだ。心のノートにメモっとけ」 情報や知識は頭のノートにメモり、大切な事柄は心のノートにメモる、最初の教えであった。 初飛行後――。 デニールのアクロバット飛行に度肝を抜かれ、すっかり気持ち悪くなってしまった六太。そんな六太に、デニールは楽しそうに『もう一度乗るか?』と聞いてきた。止まるも進むも、コントロールするのは自分次第なのだ。 「ちなみにヒビトは吐いた後、うれしそーな顔しながら、もっかい乗せろと言ってきたぞ。心のノートにメモっとけ」 兄が弟に負けるわけにはいかない。六太はヘルメットを掴むと、もう一度乗せろと合図したのだった。 「イッツ・ア・ピース・オブ・ケイク!」 そして訓練の日々は続き――。 休憩中、六太はずっと気になっていたことをデニールに質問した。 『なぜ歩けるのに車椅子や杖を使っているのか?』と――。 いつか本当に歩けなくなるシャロンのことを考えれば、デニールがふざけてるようにしか見えなかったのだ。デニールは『これもすべて訓練だ』と答えた。晩年脚を悪くした父や祖父と同じように、いつか自分も歩けなくなるかもしれ

S2 · E16 25分

デニール化 第16話

あなた

自分でコントロールできる限り、精一杯やる――。 そう覚悟を決めた六太だったが、T-38の操縦訓練は、決して順調とはいえなかった。教官・デニールが、飛行中なにかとジャマを入れてきて、景色を観る余裕すらなかったのだ。 焦る六太にデニールはいう。 『一流のパイロットは、飛行機を飛ばしながら気の利いたジョークも飛ばせ、いつでもどこでもアクロバットで楽しめるもんだ』 六太には一流の宇宙飛行士になって欲しい、そのためにも一流のパイロットになって欲しいというデニール。実のところデニールは、今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら、教官を引退すると決めていた。六太が最後の生徒なのだ。 その頃、日々人は――。 ダミアン、リンダ、ピコと共に、無事に帰還できたことに祝杯をあげつつ、訓練中の六太のことを話題に上げていた。デニールの教えを受けていた日々人は、その内容がやたらと負荷をかけてくる事を知っており、六太がもう『デニール化』した頃ではないかと楽しそうに語った。 デニール化とは、知らず知らずのうちに自分が凄腕パイロットになっているということをいう。改造されたマックス号に乗ることや、やたらと話しかけ頭の中の処理項目をどんどん追加させるデニールの行動は、すべて利にかなった訓練方法だったのだ。そうとは知らない六太だったが、見事『デニール化』していた。その運転技術は目隠し飛行をしながらアクロバットができるほど上達していたのだ。 訓練中、デニールに六太は、なぜ訓練前いつも写真に敬礼しているのか尋ねた。 「彼らにあいさつもなしに、アスキャンに

S2 · E17 25分

二つの鍵盤 第17話

あなた

「今回担当する教え子が宇宙飛行士に認定されたら――ワシは引退すると決めとった」 自分が教官・デニールの最後の生徒だと知った六太は、一流の宇宙飛行士になるために、一流のパイロットを目指すことを決め、懸命に訓練を続けていた。 しかしある日、新しくきたシャロンの手紙から、彼女が少し元気をなくしているようだと感じとる。 『いま出来ることで、シャロンに喜んでもらえるようなことはないか――』 考えた末、六太はシャロンに、『大きな荷物』を贈ることにした。 一方――。 シャロンに元気がないようだと感じていたのは、六太だけではなかった。同じように手紙をもらっていた日々人も、シャロンのことを心配していたのだ。そのため、会議や講演会でいったん日本に帰国した日々人は、多忙なスケジュールをやりくりし、『大きな荷物』を持ってシャロンに会いに行くことにした。 シャロンの研究所へ着くと、日々人はまっすぐピアノの部屋へと向かった。ピアノの鍵盤を押し、自分が買ってきた『大きな荷物・キーボード』の鍵盤の方が軽いことを確かめると、笑顔でこう言った。 「シャロン、これで気晴らしに一曲出来るよ」 笑顔の日々人に、驚きと喜びの涙を浮かべるシャロン。そして、一緒にいた助手の田村も驚き、感動していた。 それもそのはず、実は六太からも『キーボード』が贈られていたのだ。きちんと手紙も同封されており、最後の一文には「弾いてみてよ 六太より」と書かれていた。 六太と日々人に送られたシャロンの手紙には、「手に力が入らなくなり、大好きなピアノを弾こうにも、鍵盤は重く、弾

S2 · E18 25分

日々人に並ぶ 第18話

あなた

2026年8月23日、日本にてアニメ版ミスターヒビットがスタートした頃――、六太はジョンソン宇宙センターの超巨大プールにて、無重力に似た環境での船外活動の訓練に励んでいた。 2026年11月1日には、六太や宇宙飛行士仲間たちが、デニール・ヤング、68歳の誕生日を祝い、丸いグラサンをプレゼント。 2027年6月20日――たくさんの訓練とイベントを経て、六太たちは『デニール引退の日』を迎えた。 引退式直前、ラストフライトのためマックス号へと向かっていた六太に、デニールは一つの頼みごとをする。それは、離陸から着陸まですべて六太にやって欲しいというもの。本来、訓練生が離着陸を任されることはないのだが、「お前はワシが育てたんだ。自信をもってこの身をゆだねられる」とデニール。規約違反になると戸惑いつつも、六太はデニールの最後の頼みを受け入れる。 「最後の生徒がお前でよかったぜ、ムッタ」 ラストフライト後――引退式。 主役であるデニールを囲み、六太や職員たちが、水の入ったバケツを構えて立っていた。デニールは軽く笑みを浮かべると、六太の目をまっすぐ見て言った。 「心のノートにメモっとけ。引退式でぶちまける水の勢いは、退く者への感謝の大きさに比例する」 六太は泣きそうになるのをこらえ、誰よりも先に、バケツの水を遠慮なきスイングでぶちまけた。その大きなしぶきは、デニールへの大きな感謝の証となり、職員たちの水しぶきが後に続く中、六太の心のノートには、デニールとの日々がメモられていた。 そして――ついに六太たち訓練生は、正式な『宇宙

S2 · E19 25分

諦めのような覚悟 第19話

あなた

バトラー室長に呼び出され、自分が新人にしては異例の出世コース、『バックアップクルー』に推薦されたことを知らされた六太。バックアップクルーとして一通り訓練を遂行すれば、次はもう宇宙へ行けるらしいのだが、その行き先は月面ではなく、ISS(国際宇宙ステーション)への搭乗とのことだった。本来は喜ぶべきことだが、シャロンとの約束を守るため、誰よりも早く月へ行きたいと思っていた六太は、大いに戸惑っていた。もしISSの方向に進んだら、宇宙へは近道になるが、月へは遠回りになってしまうのだ。 しばらく一人で考えた末、六太は自分にとって一番の金ピカである『月』を目指し続けることにした。そして、自分よりふさわしい人物である伊東せりかに、ISSへの席を譲ることに決めたのだった。 願い通り、せりかがISSのバックアップクルーに選ばれると、その直後、六太の研修先も決まった。それは、機械音が響く工場の中にある、月面基地局の開発部署だった。これから六太は、少々クセのある技術者・ピーター、ダン、ハロルドたちとともに、バギーの開発・改良業務に加わることになったのだ。 六太がここで良い働きを見せれば、自ずと月への道は開かれる……という話だったが――前途は多難だった。目下の課題が、月面バギーの改良だったからだ。これは、『落ちても壊れないバギー』にするか、あるいは『落ちないバギー』にしなければならないという難題であった。 解決の糸口をつかむため、技術者たちに詳しく話しを聞く六太。驚くべきことに、これまでずっとバギー開発は、車の専門家を雇わずに作ってき

S2 · E20 25分

リハーサル 第20話

あなた

次なる六太の目標は、月ミッションへの道を開くため、月面の谷に落ちても壊れないバギーか、もしくは落ちないバギーを作ること。なにか良い案はないかと模索していたある日、六太は日々人と、兄弟並んで雑誌の表紙に載ることになった。 撮影場所は、古い倉庫の中だった。 倉庫の中に入ると、まるで月面のような、カッコいい撮影ステージが広がっていた。表紙写真のコンセプトは、『日本人ムーンウォーカー第1号南波日々人と、その後を追って月へ向かう兄の六太、同じ舞台で追いつ追われつがんばっているライバル兄弟をテーマに、今の二人の姿を通じて世の働く人々にメッセージとして感じとってもらおう』というもの。 そのため日々人は宇宙服でビシッと決めていたが――六太の衣装は変だった。元サラリーマンが宇宙飛行士になって今まさに宇宙を目指しているという表現のため、六太の衣裳は、上半身は宇宙服なのに、下半身はズボンと革靴だったのだ。 撮影が始まると、六太は日々人の様子がおかしいことに気付いた。 宇宙服のヘルメットの中の日々人は、汗をにじませ、険しい顔をしていたのだ。 心配する六太に、日々人はなんでもないというが――……? 日々人、ロシアへ出発の日――。 新たな訓練のためロシアへ行く日々人を見送った六太は、雑誌の編集者からもらった写真を見ていた。それは、月面に2人が並んでいる写真。 『とりあえず、リハーサルは終了だな、日々人――』 兄弟そろって月面に立ちたい、すぐに追いついてやる、六太の顔はやる気に満ちていた。 一方、日々人は険しい表情で2人の写真を見ていた。

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日々人の障害 第21話

あなた

月での遭難が原因で、パニック障害となってしまった日々人は、このことをシャロンにだけは話していた。 『船外活動ができないうちは、月ミッションへの参加はできない――』 『治るかどうか、わからない――』 重い口調で話す日々人に、シャロンは微笑んだ。 「治るわよ。ヒビトなんだから」 シャロンの後押しを受け、心を少し軽くした日々人。 治療のため、六太や家族には内緒で、単身ロシアへ赴こうとしていた。 その頃、六太とNASAの技術者たちは、月面ローバーの改良案について相談していた。月でのハンドリングやブレーキを改善するためには、浮かないように車体を重くするしかない。だが月へ物を送るには、何百億円もの大金がかかるようなのだ。現実的には不可能な案しか出ない中、不意に六太が閃いた。 解決できるかもしれない案を思いついたかもしれない――らしいのだ。 すぐさま六太は、以前勤めていてクビになった、ミラクルカーコーポレーションに電話をかけた。昔自分が企画した『飛行自動車』と『フロントガラス』の設計を思い出し、ローバーの改良に使えると考えたからだ。話しをしていると、電話の相手は元同僚から、六太をクビにした張本人・間寺役員に代わった。間寺の要件は、娘が新田のファンなので、サインが欲しいということ。少なからず宇宙に興味があると知った六太は、これをチャンスだと思い、すかさず協力を求めた。 「車のプロの実力をぜひ、宇宙で役立てたいんです!」 六太の言葉に気をよくした間寺は、NASAのローバー開発に、格安で協力することを約束してくれた。 さらにJAXAの

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道なき月に道を 第22話

あなた

月での事故が原因で、宇宙飛行士として致命的な、パニック障害となってしまった日々人。その治療に専念するため、家族や、とくに六太には内緒で単身ロシアへと向かっていた。 一方六太は、いままさに、バトラー室長と吾妻、NASAの役員たちに、『崖や谷に落ちない、月面バギーの改良案』のプレゼンを始めようとしていた。この案が通れば、六太も月の訓練に参加できるかもしれない。緊張した面持ちで提案したのは、「道なき月面に道を映し出す」という大胆な発想だった。 以前、ミラクルカー社という自動車会社に勤めていた六太は、渋滞する日本の道路を改善しようと、『空飛ぶ車社会』という企画を進めていた。しかし、車は飛ばすことができても、道路は飛ばすことができない。そこで考えたのが、『それぞれの車のフロントガラスに、架空の共通道路を映す』というものだった。結局この企画は上司には現実味がないと却下されたが、六太の元後輩・技術チームの中川と糸井は諦めず、フロントガラスに道を映すことができる『カーナビ・フロントガラス』の研究を続けていた。 そして現在、二人の頑張りが実り、すでにその技術はほぼ完成。これを応用すれば、月面ローバーのフロントウィンドウに道を映すことが容易にできるというのだ。 さらに、六太の発表は続いた。 JAXAに協力を要請したところ、『かぐやII』が観測した地形情報から作った、最新の月面3Dマップも提供してもらえるというのだ。この3Dマップは、月の35パーセントの範囲までであれば、クレーターの位置や深さまで、かなり詳細に閲覧することができる

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魔法の裏技 第23話

あなた

六太が提案した『フロントナビシステムを利用した月面ナビ』は、NASAの役員満場一致のもと、実装が決定されようとしていた。 これでようやく六太も月の訓練に参加できる、と思いきや――バトラー室長だけは、六太を参加させるか否か迷っていた。それは、パニック障害に苦しむ日々人を思ってのことだった。バトラーが慎重になる理由は、20年以上前にNASAにいた宇宙飛行士、ロナルド・クーパーと日々人が似ていたからだった。ロナルドは、T―38の飛行訓練中に事故で死にかけ、その後パニック障害になってしまった。治療に励むも思うように成果が出せず、最後はNASAを去ったのだ。 いま判断を焦れば、日々人も同じように宇宙飛行士を辞めてしまうかもしれない、バトラーはそれを心配していたのだ。 一方六太は、飛行場で先輩宇宙飛行士であるアレックスに、『バーティカルクライムロール』というアクロバット技を教えてくれと頼んでいた。月の訓練への道を開くには、結局、バトラーに認めてもらうしかないと気づいたのだ。以前、バトラーは「自分を一人前のパイロットだと感じたのはいつか?」という問いに、こう答えていた。『バーティカルクライムロールを教官の前で披露したときだ』――と。 バーティカルクライムロールとは、回転しながら急上昇していく、ド迫力のある技である。見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられるため、バトラーは己の出世欲、宇宙への憧れ、向上心、それらをストレートに伝える力が秘められていると感じ、宇宙への切符を勝ち取る魔法の裏技と思っていたのだ。六太はバトラー

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わたしの両手 第24話

あなた

月の訓練への道を開くには、バトラー室長に認めてもらうしかない。そう感じた六太は、先輩アレックスとT-38に乗り込み、魔法の裏技を披露しようとしていた。 魔法の裏技とは、見る者にはロケットの打ち上げのようにも感じられる、バーティカルクライムロールというアクロバット技のこと。 六太はバトラーの前でこの技を見せることこそが、宇宙への近道だと思ったのだ。 18時30分ちょうど、六太の魔法の裏技は、バトラーにも見える位置で見事に成功した。だが、六太の計画はこれで終わりではなかった。その3分後、さらに六太は、2つ目のアクロバット技を決行しようとしていたのだ。 実は六太は、バトラーだけでなく、せりかにもメールを送っていた。その内容は、『今日の訓練でエーリントンに着いたら、18時33分に空を見てほしい』というもの。以前、六太の飛行の師匠・デニールは言っていた。 『空にハートマークでも描けりゃ一流だ。意中の女にでも見せてみろ。イチコロだぞ……ウハハッ』 六太はせりかにハートマークの軌跡を見せて、告白しようとしていたのだ。 しかし残念なことに、せりかのいるシャトルバス側から見えたものは、ハートマークではなく、バルタン星人のハサミ型だった。 そしてハートマークに見える位置から空を見上げていたのは、なんとバトラーだった。自分が告白されたと思い赤面し、愕然と空を見上げているバトラー。その様子は、明らかに動揺していた。 「ミスタームッタ……それは……マズイでしょ……」 一方、日本にいるシャロンは、来日したモリソン博士たちに、月面望遠鏡の計画

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オリガ 第25話

あなた

月での事故が原因で、宇宙服を着て緊張状態に置かれると、発作に襲われるようになってしまった日々人。このままでは宇宙での船外活動ができず、希望する月ミッションには加われない。そこで日々人は、かつての自分を取り戻すべく、兄・六太には病状を伏せたまま、極寒の地・ロシアへと向かった。そこには、日々人のことをヒビチョフと呼ぶ破天荒なロシアの英雄・宇宙飛行士イヴァンと、日々人に想いを寄せる娘オリガが待っていた。

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宇宙飛行士の娘 第26話

あなた

与圧服を着ただけで、たった10メートルの距離も歩けなくなってしまった日々人。自分は宇宙飛行士失格だと感じ、リハビリ訓練も、2日続けてサボってしまっていた。 『これからどうしたらいい……』 途方に暮れていると、イヴァンから一通のメールを受信する。 『今夜飲みにつき合え——、一人になるな』 その夜、とても陽気に飲む気分ではなかったが、なんとか待ち合わせの場所へ来た日々人。早くもイヴァンは飲んでおり、「頼みがある」と、映像データーが入ったDVD『オリガの成長記録1』と、ビデオカメラを日々人に手渡した。なんでも、明日ダンスコンクールがあり、オリガが出演するという。自分は訓練と重なって行けないため、日々人にオリガを撮影してきて欲しいというのだ。 そして、イヴァンは落ち込む日々人に一本の道を示した。 「できることから習慣づけろ——まずは私と酒を飲め!」 ほろ酔いで帰宅した日々人は、早速オリガの映像を観ていた。画面の中のオリガは、何度やってもうまく踊れず、すぐにいじけては怒られていた。明らかにまわりの子の方がうまい状況に、オリガにバレエは向いてないんじゃないかとさえ思えてしまうほどだった。 しかし、オリガの夢は今もダンサー。 このあと彼女は、どうやってこんな辛い練習を続けられたんだろうか——? 公演当日——。 ビデオカメラを片手に、日々人は劇場へ来ていた。大勢の観客の中、やがて幕が開くと——星空の下で子どもたちが踊り——主役が登場する。驚くことに、主役はオリガだった。舞台を観ながら、日々人は練習を嫌がる子どもの頃のオリガを思い

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時間切れ 第27話

あなた

日々人はオリガのバレエの公演を見る。ビデオで見た幼き日のオリガと違い、舞台の上の彼女は美しく、まるで無重量空間にでもいるようだった。オリガはずっと、「見えない踏ん張り」を続けて来たのだ。そんなオリガに元気をもらい、日々人はリハビリ訓練に復帰する。だが、イヴァンが提案した新しい訓練は、とても奇抜なもの。「大事なのは『できる』という経験を得ること。楽しみながら克服しようではないか!」その訓練内容とは?

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オリガとヒビトとガガーリン 第28話

あなた

月での事故がきっかけで、パニック障害となってしまった日々人。ロシアで極秘にリハビリ訓練をしていたところ、JAXAから突然の帰国命令が届く。リハビリに時間がかかっているという理由で、『安全スーパーバイザー』として働くよう、辞令されてしまったのだ。 このことは、日々人を指導していたイヴァンにも遺憾だった。イヴァンはどうしても、日々人を治してやりたかったからである。実は宇宙飛行士だったイヴァンの父親も、日々人と同じパニック障害だったのだ。だが意義を申し立てたくても、ロシア人の彼に、日本人の日々人の処遇は変えられない。 悔しい気持ちを抑え込む日々人に、イヴァンは言う。 『今は耐えるしかない。辛抱強く、復帰することだけを考え続けろ——』と。 その夜——。 帰国のため荷物をまとめていた日々人の部屋に、思わぬ来客があった。それは、泣きはらした顔のオリガだった。日々人の処遇を聞いたオリガは、居ても立ってもいられず会いに来てしまったのだ。 「これ……あげる」 オリガが差し出したのは、日々人が観たがっていた、『オリガのダンスの成長記録』の続き。たまに観て、自分のことを思い出して欲しいというオリガの願いのようだった。 オリガを家まで送る道すがら——。 通りかかった公園で、オリガは自分より背の高い、ガガーリン像を片手で示した。ユーリ・ガガーリンとは、世界発の有人宇宙飛行を成功させた、ロシアの宇宙飛行士である。オリガは、イヴァンに聞いたというガガーリンの豆知識を披露。しかし最後までは話さず、「続きは次回、日々人がまたロシアに来た時に」と

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秘密 第29話

あなた

月面バギー開発で見事成果を出すことができた六太は、先輩宇宙飛行士・ビンスに連れられ、新たな訓練の説明会場へと来ていた。 その会場にはすでにケンジや新田など、何人もの飛行士たちが集まっていた。そして、12名の飛行士たちが揃ったところで、バトラー室長から訓練内容が発表される。六太たちはこれより数日後から約2週間、NEEMO(ニーモ)で実践訓練をするというのだ。 NEEMOとは、海の底、水深20メートルに設置された、仮想月面基地の名称である。そこでのシミュレーション生活は死の危険も伴うため油断はできない。だが、地球上で最も月面を再現できるため、六太にとっては憧れの場所だったのだ。 NEEMOまで、あと2日——。 六太はロシアから帰国した日々人と、朝食を食べながら近況報告をしていた。「やっと自分も月へ行くための第一段階に立てた」と喜ぶ六太を前に——日々人の顔はどうにも浮かない。怪しむ六太だが、まさか日々人がパニック障害で、さらには安全スーパーバイザーに任命されたことなど、思いもしないようだった。 日々人も、このことは六太には隠し通す気のようで——? そして——。 六太はケンジらと共に、2週間の月面シミュレーション生活へと突入。 一方、日々人は——。 安全スーパーバイザーに着任し、与えられた立派なデスクを前に、唇を噛みしめていた。 『一人でもリハビリ訓練をしないと……』 日々人が思案を巡らせていた丁度その時、ローリーが台車を押して入ってきた。 「なんか君宛にものすごい荷物が届いたよ?」 台車の上には大きなダンボールがあり、

S2 · E30 25分

一番の敵 第30話

あなた

月面ローバーの改良案が評価された六太と、ケンジ、新田を含む12名の飛行士たちは、憧れの月を目指すため、過酷な訓練を始めようとしていた。それは、通称・NEEMO訓練(NASA極限環境ミッション運用訓練)というもので、海底に造られた仮想月面基地で、約2週間のシミュレーション生活を送るのだ。 フロリダの海底20メートルの深さに設置されたNEEMOの施設は、地球上でもっとも月面を再現できる場所だった。居住施設は全部で3つあり、六太は2つ目の施設・AQII(アクエリアス・ツー)に、ケンジと一緒に入ることに決まった。 ダイビングスーツで潜水し、六太とケンジが海底施設に入ると、そこにはすでに、2名のベテラン宇宙飛行士と、1名のダイバーが待っていた。リーダーのジョージ・ラブ(宇宙飛行士)と、巨大な身体を持つアンディ・タイラー(宇宙飛行士)、そして海が大好きなハミルトン(技術支援・ダイバー)である。 NEEMO訓練1日目——。 一息ついたところで、ジョンソンスペースセンター・NEEMO管制室から初日の訓練内容が知らされた。それは船外(海底)に出て、月の重力を仮想体験するというものだった。 ラブの先導で、特殊な潜水服を着込んだ六太は、さっそく船外活動に勤しんでいた。自分の重さを調節しながら、月面を想定して動くのだ。最初はなかなか慣れない六太だったが、ケンジに励まされ、協力しながら、楽しい訓練初日を終えることができた。 船内に戻ると、ラブが今後の訓練内容について話し始めた。今後は船外活動が2割、残りの8割は同時に訓練をしている他2チ

S2 · E31 25分

宇宙家族 第31話

あなた

NEEMO訓練2日目——。 地球上でもっとも月面を再現できる場所で、月の訓練をすることになった六太たち。最終日を除く12日間でやる課題は、『三分の一スケールの月面基地、および周辺設備のモデルを船外に建設すること』、そして『各チームの新人飛行士2人が、基地の新しい設備などのアイデアを出し合い、先輩飛行士2人が採用案を検討すること』だった。 新人である六太とケンジは、さっそく互いの意見を出し合い、新しい施設案を検討する。2人とも、いま実在している月面基地を発展させる方向でいくことで意見が一致し、将来的に実現可能な基地の設備を考えることに決めた。そして、大容量通信アンテナ、ローバーなどの充電ポスト、シャロンの月面望遠鏡など、互いを尊重しながら、次々とその内容を決めていく。意見をぶつけることもないため、サクサク決まり、どんどん進む。互いに最高のパートナーと感じており、このコンビで月に行けたら楽しいだろうなと思っていた。 しかし、そんな六太とケンジのコンビの状況に、先輩飛行士たちは危機を感じていた。船外活動中にも関わらず、アンディから作戦会議ができるガゼボ(酸素補給場所)に呼ばれた六太とケンジ。そして集合した六太とケンジに、アンディからとても信じたくない発表があった。 「お前ら二人のうち、月に行けるのは、どちらか一人だけだ」 この決定事項を伝えた理由は、事実を知って競合させれば、必死になり集中力も高まり、チーム全員のメリットになると判断したからだった。これからは、六太とケンジは協力し合って課題に取り組むのではなく、互い

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俺とケンジ 第32話

あなた

NEEMO訓練3日目——。 六太たちには、重い試練がのしかかっていた。 それは、自分とケンジの二人のうち、月に行けるのは、どちらか一人だけという事実だった。 互いを最高のパートナーだと思っていただけに、ショックを隠せない六太とケンジ。 六太はシャロンのため、ケンジは家族のため、これまで辛い訓練も互いに励まし合い、頑張ってきた。これからどう接していけばよいのか、なかなか答えをだせないまま、相手の差し伸べた手も掴むことができず、すれ違うようになってしまった。 応援してくれる家族のためにも、六太と競うことを決意したケンジは、今回出した3つの案で、必要なものと、そうでないものを考え直すことにした。その結果、少ない時間でより良いものを作るため、大容量の通信アンテナと、六太が切望していたシャロンの月面望遠鏡を、建設しないことを提案する。ケンジの指摘通り、限られた時間ではいくつも施設を作ることは厳しい。六太は反対意見を出すことができず、肯定してしまう。 船外活動中、ガゼボでアンディと一緒になった六太は、『選ばれなかった方は、この先ずっと月へは行けないのか』と聞いた。アンディから返事は『いつ誰を何のミッションに任命するかなんてことは、誰にも分からない』ということだった。 事実アンディ自身も、なかなかアサインされず、随分待たされたという。同期の仲間がどんどん先に選ばれる中、なぜ自分だけ選ばれないのか、考え、苦しんだ時期もあったらしい。そんな辛い時期、アンディは考えるのをやめ、いま目の前にある訓練や仕事をさらに増やして、それで頭をい

S2 · E33 25分

スーパンダマン 第33話

あなた

訓練3日目の午後、一度は諦めると言った大容量アンテナやシャロンの月面望遠鏡を、やっぱり作ろうと言い出した六太。しかし先輩飛行士のラブは、その意見を却下する。今後はSEV(海上ローバー)の運転訓練なども増えるため、 時間内には無理だと判断したのだ。 しかし六太は諦めず、海中に停めてあったSEVから、時間問題を解決する新しい案を閃く。そしてそれをすぐに、アンディに相談した。 「アンディの有り余ってるパワーがあれば……可能かな?」 NEEMO7日目——。 六太の新しい案は、アンディのおかげで順調に作業を進め、ほぼ完成することができた。それは、SEVの荷台に搭載する新しい荷台だった。実はこれまで、資材は海中にある資材置き場から、手押し車に積んで運んできていた。そのため六太は、積んで戻ってくるだけで2時間近くかかった運搬作業を、SEVの荷台で大幅に短縮しようという。しかもSEVにロボットアームを取り付けるため、4人は組み立て作業に集中でき、運搬はハミルトンに任せられることまで考えられていた。 NEEMO8日目——。 ハミルトンが資材を運んできてくれるおかげで運搬作業がなくなり、基地制作に集中できるようになった六太たち。人材も機材もフル活用することができ、管制からの評価も上がっているようだった。しかし、ケンジは悩んでいた。六太が時間を作ろうと必死だった時、自分が選ばれることだけを思っていたからだ。 これから何を考えていけばいいのか、わからなくなっていた。 そこでケンジは、六太と話すことを決めた。 アンディに話しを聞いて、先の

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月面にいた 第34話

あなた

NEEMO訓練も9日目を迎え、ようやく六太たちが注文していた資材が届く。しかしその中に、六太には覚えのない『水の入ったボール』があった。それは、ケンジが六太を見習って、時間削減のために注文したもの。 復活したケンジのやる気もあり、六太たちは最初の計画通り、大容量通信アンテナ、ローバーなどの充電ポスト、シャロンの月面望遠鏡の3つを制作することにする。 やる気に満ちたケンジは、常に時間短縮、作業の効率化に結び付くアイデアを出し続ける。さらに呪文のように『スーパンダマン』言葉を発してはニヤけていた。それでも本当は、ケンジも六太と同じ気持ちだった。 忘れたわけじゃない。思い出さないようにしているだけなのだ。 どちらか一人だけが、月にいけるということを。 ケンジと共に力を出し合った時こそ、いろんな事がうまくいく。 どういう結果になっても、2人は最高のパートナーだ。 しかしその夜、シャロンからとても辛い、悲しい報告が入る。 月面望遠鏡を月で建設するという案は問題点を多数指摘され、NASAの協議の結果、不採用となってしまったというのだ。 この報告を聞き、六太は電力不足で暗くなっているアクエリアス内で、さらに心をどんよりさせていた。それでも、余った時間を無駄にしないために、別の設備を考えようとするが——? NEEMO訓練も終盤にさしかかった頃——。 六太のもとに、シャロンから連絡がくる。 いまは仲間と協力し、新たな月面望遠鏡の建設案を考えている最中で、次こそNASAに認められるものを目指して、シャロンは諦めないという。 『It's a piec

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明日のために 第35話

あなた

NEEMO訓練の最中、シャロンから『月面望遠鏡計画が中止になった』と聞かされた六太は、今は実現不可能と気持ちを切り替え、自分が出した月面望遠鏡制作案を取り下げた。 だが、そのかわりに出した六太の案『ソーラーミラーシステム』は、ケンジやバトラー室長、NASAの幹部たちまでも、驚かせることとなった。『ソーラーミラーシステム』とは、鏡の反射を使って、窓のない基地に太陽の光を取り入れる、照明装置である。宇宙飛行士は、月面生活のほとんどを基地の中で過ごす。そのため、月面でもし節電を余儀なくされた場合、窓のない月面基地では、部屋も気持ちも暗くなってしまう。 そのことに気付いた六太は、『設備を追加するなら中を改善したい』と考えたのだ。NASAの幹部たちは、『自分が本当に月面にいるつもりでなければ思いつかないアイデア』を出したとして、六太を高く評価した。 一方、PD(パニック障害)に苦しむ日々人は、安全スーパーバイザーとして危機管理運営会議に参加していた。しかしその会議内容は、宇宙飛行士の仕事とは関係ないものばかり。だが日々人は宇宙を諦めず、会議後もこっそりバックヤードにこもり、極秘のリハビリ訓練を続けていた。 現在の訓練レベルは9。レベル10の本物の与圧服をクリアすれば、最後に船外活動用宇宙服を着ることとなる。その訓練が上手くいけば、日々人は完全復帰できるのだ。 その夜——。 日々人は、イヴァンから送られてきた『オリガの成長記録ボリュームツー』のDVDを観ようとしていた。映像にはバレエの練習している11歳のオリガが映っており

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自分の場所へ 第36話

あなた

PD(パニック障害)を克服するため、極秘でリハビリを続けていた日々人は、その夜、イヴァンに送って貰った『オリガの成長記録ボリューム・ツー』を観ていた。 映像の中のオリガは11歳。上手くなったオリガのバレエに、日々人も喜びを感じていた。だが突然、映像の雰囲気が変わる。オリガは右足首を押さえ、苦痛の顔で床に蹲ってしまったのだ。 その事故から5日目——。怪我で動けないオリガは、バレエ以外のことがしたいと、諦めモードになっていた。怪我はおそらく一ヶ月ほどで治る程度のものだったが、結局、11歳のオリガは、怪我以降一度も踊らなかった。オリガが12歳になった頃、宇宙へ飛び立っていたイヴァンは、バレエを諦めてしまった娘を想い、ISSからメッセージを伝えた。オリガに、本当に好きだったことは何か、やりたいことは何か、思い出して欲しかったのだ。その中継で、なんとイヴァンは、ISSの無重力空間でクルクルとピルエットの姿勢で回り始めた。 「ほ~~うら! 見てるかぁ、オリガ?」 その楽しげな父の様子に、オリガはバレエの楽しさを思い出す。 そして、再びバレエを始めたのだ——。 オリガの映像に励まされ、勇気をもらった日々人は、レベル10の訓練をやってのけた。残るは本物の船外宇宙服だが、勝手に持ち出すのは不可能だった。日々人は、PDを克服したことを直接見てもらうしかないと思い、バトラー室長に、宇宙飛行士に戻るための試験をやってもらう事を頼む。 「宇宙飛行士に——戻る準備ができました」 その後日、ブライアンの命日——。 墓参りに来ていた日々人は

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プリティ・ドッグ 第37話

あなた

バトラー室長に頼み、PD(パニック障害)を克服したと証明する、『復帰試験』を受けることになった日々人。だが、試験への気合は十分だったが、失敗したら二度と宇宙へは行くことができない。そのため、不安を感じていた。 その不安を少しでも和らげようと、亡きブライアンの墓参りをする日々人。 彼の生前、何かに悩んだ時に問いかけると必ず答えが返ってきた。 日々人はその存在を今でも頼ってきたのだ。 『NASAの上官たちの見てる前で、もし発作が出てしまったら——。あんたなら……どうするブライアン……』 この日はブライアンの命日だったため、墓地には吾妻もきていた。 悩み苦しんでいる日々人に、吾妻は一つアドバイスをする。 『ヒビトも壁にぶち当たったときは、俺たちの兄貴に話しかければいい。それでもダメなら、本当の兄貴に話せばいい。お前にはいるだろ——もう一人の兄貴が』 日々人の心の中にいるブライアンも、兄・六太に相談しろと言っているようだった。 その夜、日々人は六太を呼び出し、いま自分がPDで、前線から外されていることを告白した。さらに日々人は、来週には復帰試験をするというのに、ここへ来る時、タクシーで見た悪夢が原因で、また発作が出てしまったことを話す。予想以上に深刻な相談を受けた六太だったが、弟・日々人の悩みを受け止めようとしていた。 そして、今後また発作が出そうになったらこうつぶやけとアドバイスをする。 『来たなこのPD野郎、プリティ・ドッグめ』 そうすれば、いやでもプリティ・ドッグに似たアポの顔を思い出せるからだ。 帰り際、六太は

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最後の言葉 第38話

あなた

日々人から自分がPD(パニック障害)だと告白された翌日、六太は寝不足だった。 家に帰ってからも気になってしまい、PDのことをネットで調べたり、あれこれ考えているうちに朝がきてしまったのだ。 『日々人なら楽勝で試験に合格できるはず』 そう信じつつも、六太は心配していた。 新しい訓練が始まる日——。 NEEMO訓練で高い評価を得て、次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、先輩宇宙飛行士・ビンス(ビンセント・ボールド)と行動を共にしていた。実際に月へ行く前に、『控え』の経験を積むため、ビンスのバックアップクルーに任命されたのだ。 これからビンスとは一蓮托生、二人三脚で宇宙を目指す。 にも関わらず、寝不足でフラフラな六太にビンスが言及する。 「ミスター、ナンバ。これから君は、私と同じマニュアル書を読み、同じ船室の空気を吸い、同じシートに座り、同じ訓練を受けるんです。私のリズムについて来られるようにして下さい。それが、私のバックアップクルーに選ばれた者のつとめです」 その頃、ケンジと新田は——。 六太が選ばれたことをバトラーから聞いた2人は、もう自分たちが『月へは行けない』と自覚していた。これまでの月の訓練はなんだったのか、六太が選ばれたことに不服はなかったが、今後自分たちがどうなっていくのか、不安になっていた。 そんな矢先、2人に新たな訓練を始めるよう、辞令がでる。それは、無重力環境訓練施設で、船外無重量訓練をするというもの。その意味は、『ISSへ行くための訓練をしろ』ということだった。新たな希望を与えられたケンジと新田は、

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小っちゃいメモとでっかいお守り 第39話

あなた

六太が次に月へ行く日本人に決まり、ビンスの控えとして新しい訓練を始めた頃、日々人はPD(パニック障害)を克服できたか確かめるための、復帰試験を受けようとしていた。 NASAの幹部たちが目を光らせる中、プールサイドで運命の時を待っていた日々人は、事前に六太から渡された『お守り』を見つめる。そのお守りとは、プリティ・ドッグの手鏡だった。手鏡は三面鏡になっており、肉球を押すとパカッと鏡が開く仕掛けになっていた。そしてそこには、六太からの小さなメッセージカードが入っていたのだ。 『調べてみたところ、PDの発作対策として、自分を客観視するといいらしい』 『客観視』という言葉に、日々人は子供の頃、六太と発見した出来事を思い出す。三面鏡で自分を見ると、誰かの目で見ているように感じられたのだ。この手鏡は、日々人にとってもってこいのお守りだった。 ついに入水の時——。 宇宙服を着た日々人は、管制官の指示でプールの中に沈んでいた。底に着いても発作はなく、出だしはうまくいったようだった。しかし、問題はこの後。 日々人は試験中ずっと監視され、ダイバーたちに囲まれ、動きづらい宇宙服の閉塞感の中、薄暗い水中で作業をするのである。今の日々人は、いつ発作が起きてもおかしくない状況だった。 そして、突然日々人の耳元で警報が鳴る。 トラブルが起きたと思わせるグリーンカードで、日々人のヘルメットのディスプレイに、『二酸化炭素濃度が上昇中』と表示されたのだ。トラブルを見越していた日々人は、慌てず正しい処理をする。 だが、なぜか警報が消えない。 実はさ

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ヒビトの救い方 第40話

あなた

NBLのプールでは、日々人がPD(パニック障害)を克服したと証明する、復帰試験が行われていた。 シャロンの励ましの言葉や、六太との約束、プリティ・ドッグの手鏡を支えに、最初は順調に水中での作業をこなし、船外服を着た状態でも平常を保っていた日々人。 このまま合格か——と思われたが、ゲイツがわざと試験を中断に追い込むようなグリーンカード(極秘指令)を出したことにより、事態は一変する。 『二酸化炭素の上昇』という警告表示に、月での遭難を思い出した日々人は、心拍数を上昇させてしまったのだ。 このままでは試験中止もありえる——、誰もが不安を過らせたその時、プールサイドに現れたのは、かつて日々人と一緒に月面に降り立った仲間、バディとカレンだった。六太から事情を聞き、日々人の手助けをしようと駆けつけてくれたのだ。 そしてさらに、日々人の頭上では、水中ゴンドラから降りてくる船外服を着た人物がいた。それは、月面で日々人が命を助けた、ダミアンだった。 「船外活動は基本的にパートナーと、二人でやるもんだ」 もっとも幸せだった時間を一緒に過ごした仲間の登場で、日々人の不安は完全に打ち消されていた。 その後も試験は続行され、日々人はダミアンと共に、バディとカレンの指示で、的確に作業を進めることができた。日々人の心拍数は少し上昇したが、それは発作を予感させるものではなく、月にいた時と同様の、軽い興奮状態に安定していた。 試験も終わりに差し掛かった頃、バックパックを背負った日々人は、ムーンジャンプと同じような姿勢で両手を広げ、高らかに水中を

S2 · E41 25分

孤独な彼ら 第41話

あなた

水中施設での訓練で高い評価を得て、次に月へ行く日本人に選ばれた六太は、経験を積むため、CES—62のバックアップクルーとして、砂漠での訓練を始めようとしていた。 訓練教官である地質学者のジョージ・マグワイアから説明を受け、砂漠に作られた訓練用施設に来た六太達。 月面に近い環境と、新たな訓練内容にワクワクする六太だったが、同じバックアップクルーの4人は、一癖も二癖もある連中。 この先ずっと同じチームなのに!

S2 · E42 25分

心の片隅に 第42話

あなた

六太がCES—62のバックアップクルーとして新しい訓練を始めた頃、NASAの会議室では、天文チームによるプレゼンテーションが進められていた。 その内容は、『シャロンの新しい月面望遠鏡』。 一度は却下されてしまったシャロンの夢だが、今度は実現できるのか——? そしてバトラーは、とある人物に『CES—62バックアップクルーのリーダーになって欲しい』と直談判しにきていた。 絶対的な信頼をよせる、その人物とは——?

S2 · E43 25分

ワクワクチームワーク 第43話

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月への訓練のため、ラバフロー試験場でキャンプ生活をすることになった、六太たちCES—62のバックアップクルー。 相変わらずまとまりがないメンバーは、朝のジョギングもバラバラ。仲が悪いというほどではないが、このままだとこのチームでミッションにアサインされることはないかもしれない。 六太も不安を隠せずにいた。 だがそこに、ついに『リーダー』が到着する。 誰もが尊敬するベテラン宇宙飛行士、その手腕やいかに——?

S2 · E44 25分

俺らの将来 第44話

あなた

温和なリーダー・エディが合流したことで、ようやくまとまり出したCES−62のバックアップクルー。 その夜、デザートラッツ訓練場の施設の前では、たき火が焚かれていた。たき火を囲むのは、エディ、ベティ、フィリップ、カルロ、アンディ、六太の6人全員。火を囲んで話すと、人は嘘を付けなくなるらしい。自分の事、家族の事を正直に話せば、互いに親睦が深まるというエディの考えだった。 六太が日々人のPD(パニック障害)と復帰試験の事を話し終わると、次はベティの番となった。実は8歳のクリスという息子がいる彼女。出産と育児のために、宇宙飛行士を退いていた時期があり、まだ宇宙に行ったことがないという。そして彼女の夫は、宇宙飛行士の故タック・ラベルだった。 タック・ラベルは、CES—43クルーとしてブライアンと一緒に月へ向かい、帰還時の事故で帰らぬ人となってしまった。事故直後、ベティはもう自分は宇宙飛行士には戻らないと思っていた。だが、それから三年ほど経った今、クリスがまた宇宙に興味を持ち始めたらしい。 「ねえママ。月から見た地球ってどんなかな?」 ベティはそれを嬉しく思い、父親の代わりにその問いに答えようとしているのだ。 翌日、正規クルーと合同した六太たちは、デザートラッツでの最後の訓練を始めようとしていた。現場にはピコ・ノートンがおり、自らが開発の指揮をとった『新型の月面着陸船』について説明した。 訓練後、ピコは幼馴染であるビンスと酒を酌み交わしながら、少年時代にリックとした『約束』を語った。 「いつか、リックが管制官になり、宇宙

S2 · E45 25分

宇宙飛行士であり父であり 第45話

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クリスマスが近づく頃、ケンジには家族が一人増えようとしていた。妻・ユキに、第二児の出産が近づいていたのだ。しかし宇宙飛行士としてケンジは、いま何を目指しているのかも曖昧なまま、ひたすら言われた訓練を続けている状態だった。ゴールの見えない不安な生活。それは六太が月にいくことが決まったかわりに、ケンジや新田が月に行ける可能性が消えたからだった。しかしクリスマスの日、ケンジはバトラーから呼びだされる。

S2 · E46 25分

消えないんだ 第46話

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ヒューストンで初めて揃って正月を迎えた南波一家。南波・母は、初笑いのためにDVDまで持参していた。しかし日々人は、まだ次のミッションが決まらず、不安な毎日をすごしていた。復帰試験には合格したものの、日々人の復帰に反対している人物がまだ多く、未だに訓練が少ないらしいのだ。次のミッションが決定するよう、バトラーも最善をつくしてはくれているようだが……。そして年明け、ついに日々人の行く末が提示される。

S2 · E47 25分

最強の宇宙飛行士 第47話

あなた

月面での事故の影響でパニック障害となり、前線から外されてしまった日々人。 復帰試験はなんとか乗り越えることができたが、一度パニック障害となった宇宙飛行士は、復帰できないことが判明する。その事実を聞いた日々人は、誰にも何も言わず、姿を消してしまった――。 日々人の失踪の理由を知らない六太は、心配で訓練に身が入らずにいた。 ようやくバトラーからその理由を聞いた六太は、『何かしたい』と行動に出るが――……?

S2 · E48 25分

人生可変、約束不変 第48話

あなた

『兄とは常に、弟の先へ行ってなければならない』 子どもの頃から、兄・六太はずっとそう思っていた。だが何かにつけて先へ行っていた、弟・日々人。 しかしその日々人が姿を消した今、六太は自分が先に行っているのか、後ろにいるのか、なにもわからない状態でいた。 『今のままじゃ、お前が生きてんのかどうかもわからん。何でもいいから返信よこせ』 果たして南波兄弟は、これからも宇宙を目指す道を、歩むことができるのか――…?

シーズン2は全48話

一部の情報はTheTVDBから提供されています。

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宇宙兄弟

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